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年金暮らしの一大プロジェクト その1 2018.7.2


章 不惑の歳を大きく超えたKの惑い


人間ドックに行くたびに、毎年一つずつ体の老化を指摘されるようになってきた。

 前回のドックでは、眼圧が高くなってきたと指摘された。緑内障になっては困るということで、さっそく眼科に行った。いろいろと検査をした結果、「多少眼圧が高くなっているが、特に症状も見られないので、半年後にまたいらっしゃい」という診断で安堵した。そろそろ自分の健康年齢が気になり始めた。



 退職後、あちらこちらと旅をして楽しんでいる。

 新潟からだと、海外旅行も新潟空港の利用が大変便利である。以前は、大韓航空が毎日仁川空港へ飛んでいた。
 9:30に新潟空港を出発し、11:40に仁川空港に到着する。仁川空港からは、18:30に出発し、新潟空港に20:40に到着する。
 仁川空港午後出発の便と仁川空港夕刻前到着の便を使って乗り継げば、世界各地に旅することができた。この路線を使って、中国各地や香港、カンボジアや遠くはチェコに行った。
特に、中国各地へは大変便利にいくことができた。


 もちろん大韓航空(スカイチーム)のマイレージカードを作り、しっかりとマイルも貯めた。
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年前には、大韓航空国際線搭乗40回を超えたということで、上級会員の「モーニングカーム会員」となった。モーニングカーム会員は、上級会員といっても、その中で一番下の位であるが、優先チェックイン・優先搭乗・航空会社ラウンジの利用・荷物の優先受取と、何とも心地よいサービスを受けられる。

 これは一度享受すると、とてもやめられない麻薬的要素を含むものである。



【モーニングカーム会員カード 右上のスカイチームマークの下に「ELITE」の文字が・・・】




 ところがである。日韓関係の悪化から、2年前から、この新潟−仁川線が大きく変更になった。
 第一に、毎日運航から週3便にまで縮小されたのである。さらに悪いことに、新潟空港発が13:00となり、仁川空港発が10:00となったのである。このことにより、中国線のほとんどが当日乗り継ぎできなくなった。
 また、些細なことだと思われがちだが、これまでは、前日の夜に飛行機が新潟空港に到着していた。ということは、翌朝、特別な事情がない限り、出発が遅れる
(仁川空港到着が遅れる)事態が生じないという安心感があった。このことは、飛行機の乗り継ぎにおいては、とても重要なことである。



【新潟空港発の時刻表】




【仁川空港発の時刻表】




 ダイヤ変更で唯一便利になったのは、東南アジア線である。しかし、これも現地空港を深夜に出発し、早朝に仁川空港に到着するという、機内泊を伴う旅程になってしまう。


 せっかくのモーニングカーム会員であるが、これではあまり役に立たないという状態になってしまった。


 さてどうするか。新潟空港からの国内線は、ANA(「あな」ではなく「えいえぬえい」と呼ぶ:スターアライアンス)が一番多くの路線を持っている。季節路線もあるが、新千歳空港・成田空港・中部国際空港・伊丹空港・福岡空港・那覇空港と結ばれている。


 成田線を利用して、成田空港夕刻発の国際線に乗れば、かなりの所に行くことができる。そして、午後到着の帰国便も多い。成田空港夕刻発の新潟線に乗れば、1時間ほどで新潟空港に到着する。


 もう一つ、ここ数年で羽田空港の状況が大きく変わった。ANAの国際線が多く就航するようになった。新潟駅―羽田空港の新幹線代が往復14,000円(大人の休日倶楽部料金)かかるが、羽田空港発着も選択肢の一つになる。



 いっそのこと、スカイチーム中心から、スターアライアンス中心へと乗り換えるか。いつしか、こんな考えが浮かんできていた。


 スカイチームとおさらばとなると、あの「モーニングカーム」会員の資格は、あと1年半ほどで失効してしまう。機内でもらえるコチュジャンとモーニングカーム会員資格は、捨てがたいのだが。
 何しろ、2年間の資格期間を延長するためには、期間内に20回大韓航空の国際線に搭乗しなければならないのである。このように使い勝手が悪くなって、20回の搭乗は相当苦しい。




 さて、ANAにも上級会員のシステムが存在する。

 ANAの上級会員になればいいじゃないかと考えるかもしれないが、そこには、激しく高い壁が存在する。普通の人が普通に利用しているだけでは到底到達することができないレベルの壁である。



【ANAの上級会員 ブロンズ、プラチナ、ダイヤモンドと三段階ある。】




 プラチナステータス以上が、実質的な上級会員となる。


 そのプラチナステータスを得るためには、・・・概略は、次のとおりである。

 1月から12月までの1年間に、50,000プレミアムポイントを貯める必要がある。そのためには、ビジネスクラスやプレミアムエコノミークラスで、地球1周するくらい乗らなければならないのである。


 大韓航空のモーニングカーム会員は、期間が限定されていないので、1年に
1回程度、仁川空港経由で外国に行っていれば、10年もすれば資格を得ることができる。

 ところが、ANAの場合は、1年間で達成しなければならない。12月末日を過ぎると、これまで積み上げてきたポイントが0になるのである。それに、ビジネスクラスやプレミアムエコノミークラスの搭乗である。地球1周分も乗らなければならないのである。

 もちろん、エコノミークラスでも、達成が可能であるといえば可能である。だが、そのためには、新潟空港−千歳空港間を通常手に入る割引航空券で搭乗すると、何と91回も搭乗しなければならない。この壁が、とてつもなく高いことが分かるだろう。



 仮に、今50歳代だとして、時間がたっぷりあり、それなりの資金もあれば、迷わずANAの上級会員に挑戦するだろう。ところが、年金暮らしの今、これだけの時間(時間はたっぷりとある)と体力(体力もまあまああるかな)と資金(問題はここだ)を使って上級会員になったところで、あと何年活用できるのだろうかという惑いが一番であった。そんなことを実はここ数年考えていたのである。


 それにしても、このプロジェクト、一般の方には、理解不能な計画であるに違いない。また、説明しても分かっていただけるようなものでもないだろう。


 しかし、「下手な考え休むに似たり」である。そんな先のことを心配して、やりたいことをしないというより、今できるのであれば、やった方がいいということで、実施を決意した。これ以上グダグダと考えて先延ばしにしても、残された時間が少なくなるだけである。


 そこで、「ANAの上級会員になる」を2018年の目標に掲げて、新年を迎えた。


 この先に、多くの喜びがあるに違いないという、少年のような夢を見ながら・・・。




つづく


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