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ある意味 奇跡の残留



【2016.11.4 新潟日報1面より】




 アルビレックス新潟の2016年シーズンは、苦しい一年だった。

あの、2012年の奇跡の残留の時でさえ、10勝10分14敗の勝ち点40で15位だった。
今年は、何と、8勝6分20敗で、勝ち点30で15位だ。

通常、残留ラインの勝ち点は、試合数だという。その、残留ラインにすら達していない。
これは、ある意味「奇跡の残留」だったのかもしれない。



その予兆1 2016年シーズンの年間対戦表

年間対戦表が発表されたときに、アルビサポーターに衝撃が走った。最終6節の対戦相手である。

第29節 横浜Fマリノス
第30節 鹿島アントラーズ
第31節 ジュビロ磐田
第32節 浦和レッズ
第33節 ガンバ大阪
第34節 サンフレッチェ広島


ジュビロ磐田戦は、何とかなるかもしれないが、ほかの5試合は、リーグ屈指の強豪チームとの戦いである。

ということは、その前の第28節名古屋グランパス戦までに、何とか残留の目途を立てないといけない。ここまでに、勝ち点35は、必要であろう。
少なくとも、第31節ジュビロ磐田戦後には、残留を確定させておく必要があるということである。


このことが、アルビサポーターの心に重くのしかかりながらのシーズンであった。



その予兆2 主力選手の残留と移籍選手の少なさ

アルビは、毎年主力選手の引き抜きにあい、毎年、一からチーム作り直すという、資金の少ない地方チームの宿命を背負っていた。しかし、2016年シーズンは、選手の引き抜きに堪え、主力選手を残留させることができた。ここで軍資金が枯渇気味となった。

ということは、新加入選手も少ないということである。移籍加入は、J2京都サンガから伊藤優太選手の加入のみで、あとは新人とレンタルバックの選手だけであった。

主力選手が残留できたことは、本当によかった。しかし、その選手たちで戦った2015年シーズンは、年間順位15位で、これまた崖っぷちの残留だったのである。

新しい即戦力が入らないということは、苦しい戦いになることが予想された。



その予兆3 監督交代

2012年に奇跡の残留を果たした柳下正明監督は、激しいプレスをかけて前線でボールを奪い、そのまま攻め込んで得点するというチームに仕上げた。そのために、走り込みを重視してきた。

2015年シーズンは、これまでの戦い方の上に立って、ボールを保持して相手の陣営を崩して得点をする「ポゼッションサッカー」へと進化させようとした。しかし、選手の個人能力の関係からか、うまく機能せず15位で終わり、監督交代となった。


新監督は、柏レイソルを率いて一年で首?になった吉田達磨監督。
この人は、「柳下監督の築いたものを基に、パスを重視したポゼッションサッカーをやる」という方針を掲げて、キャンプをスタートさせた。練習では、走り込みを重視せず、初日からボールを使った練習を行った。


選手は楽しいだろうけど、体力を付けられるのかな・・・ 、多くのサポーターが不安になった。



こうして、例年より早い2月27日(土)に2016年シーズンは、始まった。
初戦の相手は、アウェー湘南ベルマーレ戦だった。





【2016.11.3 最終節終了後のNスタンド】




2016シーズン開幕戦は、会合があったため、テレビ観戦もできなかった。スマホで、2−1で勝利したことを知った。

ラファエルシルバの先制ゴールと唯一移籍加入の伊藤優太の見事なミドルシュートが決まった。
このまま終わっていれば良かったのだが、終了間際にペナルティーエリアないでファールを犯し、PKを与えてしまった。勝つには勝ったが、一抹の不安がよぎった開幕戦となった。


第2節もアウェーで、対戦相手は、ヴィッセル神戸だった。
一時は2点差をひっくり返して、3−2となった。「今年は強いかも」と思った直後、ミスが絡み4失点する。


第3節ホーム開幕戦は、横浜Fマリノス戦だった。
アルビは、後半同点に追いつくも、退場者を出してしまう。そして、終了間際に得点されて、力尽きた。


第5節を終えて、2勝1分2敗で勝ち点7と、五分の成績だった。順位も9位と上昇させることができた。


しかし、その後9試合勝ちなしとなり、第14節を終えて、勝ち点11、順位は降格圏の16位となるなど、苦しい展開になっていた。


それでも、その後2勝1分と頑張り、1stステージを終えた。

ここまでの成績、4勝6分7敗勝ち点18で13位。



2ndステージは、4連敗で始まり、その後勝ったり負けたりを繰り返したりした。



9月10日(土)
全国が注目する「ある意味運命の一戦」が始まろうとしていた。

第28節(2ndステージ第11節)ホーム名古屋グランパス戦である。

グランパスは、ここまで不振を極め、17試合勝ちなしで、降格圏16位勝ち点20だった。
アルビは、14位勝ち点27だった。


グランパスは、監督を解任し、新たにあの「田中マルクス闘莉王」の復帰戦であった。
全国のメディアは、闘莉王の活躍により、17試合勝ちなしを脱し、浮上のきっかけになるという筋書きを作っていた(に違いない)。

お人よしのアルビは、まんまとメディアの思惑に乗ってしまった。しかも、あの「川又堅碁」にヘディング決勝ゴールを許してしまった。


この試合に勝てば、降格圏との差を10とし、かなり残留を引き寄せるはずだった。しかし、意に反し、グランパスが勢いを増す結果となった。


アルビは、わずか勝ち点差4で、苦しい戦いが予想される終盤6試合を迎えることになった。
残留を争うチームは、それぞれ中位以下との対戦を数試合残している。


アルビの試合で勝ちが期待できそうなのは、ジュビロ磐田戦だけだろうか。しかし、ジュビロには、ホームの1stステージで敗れている。1stステージ、この6チームとの対戦で、アルビの勝ち点は、わずか2。


今年2月、年間対戦表が発表されたときの衝撃が、巨大な現実味をもって現れてきた。


シーズン開始前の思惑であった、ここまでの勝ち点「35」どころか、わずか「27」であった。



ここで、残念ながらアルビ降格の確率を99%と見た。




【今年は、アルビ創設20周年記念だった。その記念Tシャツ ¥500】




2016年11月3日、なんだか「2012年最終戦」の時と同じように、あまり会話もなく、車はビッグスワンの駐車場へ向かった。
しかし、席についてピッチを見渡しても、あの時に比べ、あまり悲壮感はなかった。

人は、これを「残留力がついた」と呼ぶらしい。


今日の主審は誰だろうとピッチを見れば、何とあの「家本正明」氏ではないか。

ここでまた、あの憎っきガンバ大阪のDF岩下敬輔の映像がよみがえった。
昨年の対戦でのことである。岩下敬輔は、ボールの動きと関係ないところで、大げさな動作で倒れた。こともあろうか、この不純?な行為を受け入れて、PKを与えたのである。その時の主審こそ、誰やあろう家本正明氏なのである。この人のレフェリングについては、いろいろな話の種が尽きない。

「家本さん、去年のこと忘れていないよね。」という意味を込めて、小さな拍手を送った。


さて、「飛車・角・金・銀」落ちのアルビレックス新潟。
すでに降格が決定している17位湘南ベルマーレと対戦する名古屋グランパス。
勝ち点1差ながら、サガン鳥栖と対戦するヴァンフォーレ甲府。

運命の戦いは、13:33それぞれの会場で、同時に始まった。


さて、アルビ。
前半21分、さあカウンターを仕掛けるぞというその時、パスをカットされ、ピーターウタカに先制ゴールを許す展開となった。こうなると、がぜん強いのがサンフレッチェ広島。がっちりと守備を固める。


失点すると気になるのは、名古屋グランパスの戦況となる。
2012年と違い、WIFIなどの電波状態も良いらしく、あちらこちらから最新の情報が聞こえてくる。何だか、名古屋グランパスがリードされているらしい。



ハーフタイム時に、他会場の途中経過が表示された。

「名古屋グランパス 0−2 湘南ベルマーレ」との表示に、微妙なざわめきが広がった。



後半が始まるが、アルビレックス新潟は、防戦一方という感じになっている。

家本正明主審の仕事ぶりといえば、かなり新潟寄りのように見える。さすがに、去年のことを反省しているらしい。(そんなことはないか)


目の前の試合よりも他会場が気になるという、異様な雰囲気がビッグスワンを覆い始めた。


アルビレックス新潟は、堅い守備のサンフレッチェ広島を攻めあぐんでいる。

そのうちに、「名古屋グランパス 1−3 湘南ベルマーレ」という情報がどこからともなく聞こえてくる。


終了間際、アルビレックス新潟の三人目の交代は、DF大野和成だった。

あれ、負けているのに守りを固めるの???という状態だった。どうやら、他会場の情報を見ながら、残留するための苦肉の策を取ったらしい。



こうして、アルビレックス新潟は、勝ち点30、得失点差−16で、2016年シーズンを終えた。

あとは、名古屋グランパスが負けるのを待つだけだった。

例によって?あちこちから拍手が起こる。そして、残留を伝える場内放送が・・・。と、まあ、一応歓声は上がったが、なんとなく冷めた感じのものであった。

2012年の、あの「奇跡の残留」には、遠く及ばないものであった。せめて、勝って残留を決めてくれたらなあというのが本心だった。



ある意味奇跡の残留と言える所以

・2016シーズン、一度も連勝がなかった。
・勝ち点30という過去最低の残留だった。
・年度当初の不安であった最終6節を、不安通り1勝5敗で終えたのに、残留した。
・年間で、降格圏に入ったのは、16位になった3節だけだった。2ndステージは、4勝13敗で勝ち点12だったのに、一度も降格圏に入らなかった。


それにしても、よかったのは、残留した事だけという散々な2016年シーズンだった。



ホーム最終戦セレモニーでの田村社長のあいさつ。最近恒例になった大ブーイングが悲しかった。
このような結果になったのは、一人社長のせいだけではなかろう。スタッフも選手も、そして、我々サポーターにも責任があるだろう。


細々とした年金生活の中から、年間20万円近くの大金を払って応援しているのは、地元新潟に日本最高のリーグで頑張るチームがあるからだ。本物のプレーの素晴らしさ、本物の感動を間近に見ることができるのである。これは、お金にかえられない宝物である。

もっともっと多くの人に、この感動を味わってもらいたい。
しかし、毎年毎年ハラハラドキドキではね・・・。



とまあ、力んでみたが、来年度心機一転、新しいチームをスタートさせてもらいたい。

ということで、今回の残留記念大宴会は、プレミアムモルツわずか2本と、しょぼい乾杯で終えたということが今シーズンのすべてだった。



【年間勝ち点の推移  青:甲府  オレンジ:新潟  赤:名古屋 薄氷の残留だったことが分かる】



おしまい




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