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バイクに乗って その2

「バイクでは,人にけがをさせるときは,自分もけがをするときである。」

これは,40年ほど前に,二輪免許を取りに自動車学校に行ったときの教官の言葉である。
重大事故を起こせば,その危険はライダー自身にも降りかかってくる。特にバイクの場合は,そのダメージが大きい。だから,事故を未然に防ぐことを常に念頭に置いて運転しなければならない。この言葉は,二輪・四輪を問わず運転者としての自分の座右の銘としている。

バイク=危険な乗り物 という図式が一般に定着している。
確かに,むき出しで四輪と同じスピードを出して走っている。転倒するかもしれない。暴走族というイメージがあるかもしれない。不良の象徴でもあった。

バイクは本当に危険な乗り物なのだろうか。自分は必ずしもそうとは言えないと考えている。むしろ危険なのは,交通ルールを守らない運転者,状況判断のできない運転者である。車と語り合わない運転者である。つまり,すべては人に帰結する。

今の四輪車は,まるでゴーカートそのものである。アクセルさえ踏めば,誰でも猛烈なスピードが出せる。自動車というぐらいであるのだから,より自動に近づくのが進化なのであると思うが,必要以上に進化させすぎてはいないだろうか。

運転免許にはAT限定もあり,比較的容易に取得できるようである。これはこれでいいことであるが,あの「半クラッチ」の苦労は,無駄なことではないと思う。ガリガリとノッキングしそうになると,エンジンがギアダウンを求めてくる。運転をしながら,エンジンと語り合う一場面である。

このような利便性の向上は,別の所に影響してくる。
運転が楽であるから,「携帯をしながら」「お菓子を食べながら」などと,運転に集中しない要素が多くなる。また,密室で安全が守られているという誤解から,スピードの出し過ぎ,指示器不点灯の車線変更など,ざらに行われる。一つ間違うと危険な乗り物であるということを忘れている(考えていない)運転者の意識こそ,危険な乗り物を作り上げているのである。    つづく


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