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バイクに乗って その1


バイクとは,何とも不自由な乗り物である。

・寒いし,暑い。快適なのは,5月・6月・9月・10月の4か月くらいである。
・ブーツ,ジャケット,グローブ,ヘルメットは必需品で,出発まで時間がかかる。
・雨や風などに行程が左右されやすい。
・路面の凹凸やマンホール,アスファルトの切れ目など,路面状況に応じた運転が必要となる。
・止まるたびに,ローギアまで戻して,足をつかなければならない。
・移動中は,飲み物食べ物がまったくとれない。
・周囲の車の理解が薄い。

数え上げたらきりがない。しかし,これらの不自由さを補って余りある魅力がそこにはある。

一番の魅力は,空気を感じながら移動できることであろう。季節季節のにおいがする。場所場所での香りを肌で感じる。海岸近くでは,磯の香りがする。また,花のほのかな香りも敏感に感じる。ときには,豚君たちのにおいまでも・・・。
そして,温度の変化。山に登って高度が上がると,ひんやりとしてくる。岬を曲がったとたんに気温の変化を感じる。トンネルに入ると,気温が下がる。長いトンネルの中央部分などは,夏でも寒い。

もう一つの魅力は,全身を使ってバイクと一体となって運転することである。
右手:アクセルと前輪ブレーキ 左手:クラッチ 右足:後輪ブレーキ 左足:ギアチェンジ 両膝:タンクを挟み,バイクと一体になる。
そして,両手と体重移動によってカーブを曲がる。
低速のとき以外は,ほとんど体重移動と傾斜によりコーナーを曲がる。つまり,路面の状況を見極め,最適なギアを選択し,体重移動と傾斜を瞬時に判断してコース取りを決定していく。
このとき,バイクの車輪が道路をしっかりととらえていると感じる。この「グリップ感」がたまらない。
一つのコーナーを曲がるたびに,自分の操作を反省し,次のコーナーの操作に生かしていく。タンデムのときは,パッセンジャーに不安を与えないようにするための配慮も必要になってくる。

つまり,自然や道路そしてバイクとの対話がそこにある。

このように,ライダーには,不自由であるが故の自分なりの厳しいルールと安全への自己統制が求められる。

エアコンの効いた密室での移動では,とうてい感じることができない経験をすることができるのである。 つづく


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