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中国で横断歩道を渡る  

 
中国の教育関係者との交流のため,何回か中国を訪問しました。その中で,中国での道路横断で感じたことを記します。

 中国での道路横断には恐怖を覚えます。理由の一つは,歩行者優先という考えがないからです。中国の歴史から見れば,歩いている人のため車が止まるという概念がないのは当然かもしれません。もう一つの理由は,交差点を右折する車(日本の場合は左折)は,赤信号でも交差点に進入できるというルールです。歩行者用の信号が青でも,堂々と右折車が交差点に進入してきます。

 片側3車線もあるような大きな交差点でも,信号のないところがあります。横断歩道の表示はあるのですが,この6車線をどのように渡りきるか,大きな問題です。パックツアーではこのようなところを横断するようなことはありませんが,個人で行動しているときは,必ず突き当たる問題です。

 横断の要諦は,「ゆっくり歩いて,折り合いをつける」です。「ゆっくり歩く」とは,運転者に歩行者の行動を予測させるということです。運転者は,歩行者の進み具合を見ながら,歩行者の前を通るか後ろを通るかを決断します。歩行者は,車の動きを感じながら,歩を進めるか止まるかを決断します。これが「折り合い」です。止まった歩行者の前後ぎりぎりの場所を車が通っていきます。道路横断は緊張しますが,渡りきったときは,安堵感と達成感と連帯感が生まれてきます。

 日本の交通システムは安全重視であり,世界に誇るものです。しかし,そこには,思わぬ落とし穴があるように感じます。

・信号が青になった瞬間,ダッシュして横断する子どもがいる。青信号で渡るという交通ルールを守っているが,ルールだけに自分の身の安全を委ねている。
・必要以上にゆっくり横断する人がいる。自分たちが優先だという自己中心的な行動で,青信号で左折しようとする運転者の気持ちなど全く考慮していない。

 いろいろな人がいろいろな手段で行き交う道路交通は,社会生活の縮図です。安全を確保し,効率的に運用することが必要です。お互いの状況を確認し折り合いをつけていくという社会性の基本を身につけていく場でもあります。


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