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哈爾浜・長春の旅 その8 考察編 2017.6.23〜26


今回の哈爾浜・長春の旅は、大変有意義なものであった。4日間を振り返り、考えたことをまとめてみたい。



(1)「愛すべき中国人」という表記

 もしかすると、上から目線で中国人を嘲笑うような表現と捉えられたかもしれない。

確かに、爆笑を誘うシーンや驚きのシーンが多くあった。
しかし、冷静になって考えてみると、いろいろなことを思いめぐらせるようになってくる。

面白おかしな出来事の中にも、学ぶべきことが多く隠されており、現代日本に生きる我々に、警鐘を鳴らしていると感じる。



勝手にいくつかに分類してみる。


その1 日本人もいつか来た道

・愛すべき中国人たち3       腹出し男と唾吐き男
・愛すべき中国人たちとバス7   おんぼろバスと種まきおばさん
・愛すべき中国人たち8       早朝勤務
・愛すべき中国人たちと田舎道12 これが、国際空港とトランジットホテルを結ぶ道か


高度成長期を迎えるまで、日本人も貧しかった。少なくとも御幼少期のKは、貧しかった。

くしゃくしゃに弱った、お下がりの服をいつも着ていたように思う。
今のようなごみの収集もなく、家の裏に穴をほって、生ごみを捨てていた。
舗装された道路など少なく、田んぼに続く道々には、牛糞が落ちていることもあった。
今のように、一日の勤務時間が8時間とか、7時間30分ということもなかっただろう。

皆、生きるのに精いっぱいだったのだ。わずか、60年ほど前のことである。



その2 上に政策あり、下に対策在り

・愛すべき中国人1  財布を持たない中国人
・愛すべき中国人4  勝手に両替


 国の方針を決めるのが政治である。しかし、どのような制度であっても、人々は対策を練って、したたかに生きていく。

なぜ、中国人は財布を持たないか。それは、危険の分散という、危機管理であろう。
もちろん大金を持っていないということもあるだろうが、現金を持ち歩くということほど危険なものはない。
スリや窃盗の対象となる。

 お尻のポケットに財布を入れたまま行動している日本人、平和ボケ・安全ボケと言われても仕方あるまい。
日本は安全だからいいという意見もあるが、このグローバル社会、国際スタンダードから大きく外れている。

 日本のサービスは過剰ではないかと思われることも多い。自分の所を他と差別化するために、過剰サービスがエスカレートしている。

「勝手に両替」などは、まさに庶民の素晴らしいアイディアであろう。両替機付きのバスでは、このような大胆な考えは生まれてこない。



その3 人目を気にせず自分のやりたいことをする

・愛すべき中国人たち2  ミニ爆買い
・愛すべき中国人たち5  「日本人だ!」
・愛すべき中国人たち6  お客と一緒に賄い昼食
・愛すべき中国人たち9  肥料袋おじさん
・愛すべき中国人14   飛行機の座席でのシンクロナイズドスイミング


 中国人という、大陸的な発想に根差しているのであろう。自分の興味あることについては、周りの人はお構いなしである。

 場の空気を読むことを重視する日本人との大きな違いである。
集団や場の雰囲気を大切にする日本人、とても素晴らしい美徳である。
しかし、空気を読みすぎるということは、自分で自分を息苦しくすることになるのではないかと、危惧している。

いじめなど学校での多くの問題も、そんなところに起因しているように思えてならない。



その4 みんな温かい血が通っている

・愛すべき中国人10    早とちり、案外誠実なタクシードライバー
・愛すべき中国人たち11  中国語しか話せない服務員
・愛すべき中国人13    ニーハオ小朋友


 基本、みんないい人である。多くの中国人と交流しているが、本当にそのように感じる。そして、一生懸命に取り組んでいる。
国の体制や育ち方が異なるため、考え方や行動に違いがみられるのは確かである。それを互いに知り合うことが、今こそ必要なのではないだろうか。



作家の吉川英治氏の言葉に「我以外皆我師」というのがある。

愛すべき中国人たちから学ぶことは、とても多くある。
それらをもとに、自分の生き方を考えることこそが、異文化理解・多文化理解・多様性の理解ということであり、海外に旅をする意味である。



(2) 満州国

 重い歴史である。日本と中国とでは、それぞれ歴史観が異なるであろう。
このことを考えるとき、山崎豊子原作のNHKドラマ「大地の子」が脳裏をよぎる。


哈爾浜から長春に向かう車窓に映る景色は、果てしなく地平線まで続くトウモロコシ畑であった。それが、約250q続く。

事の顛末を抜きにして考えると、この大地を自分のものにして、開拓していきたいと思うのも、不思議ではないと感じた。


大地の子では、孤児となった主人公「松本勝男」が、養父の家を逃げ出し、お腹をすかせて生のトウモロコシをかじるシーンがある。

敗戦を知らず、多くの満蒙開拓団が、凄惨な逃避行をつづけた地であることを想像すると、胸に迫るものがあった。



 満州国の首都として建設された新京(長春)や、奉天(瀋陽)、大連などをインフラ整備は、とてつもなく大きなものであったことを見てきた。
当時の人たちは、日清戦争や日露戦争という大きな犠牲を払って得た土地を何としても守り、育てていこうとしていたのであろう。


 これは、日本人側の考え方である。一方で、その犠牲になった中国側の被害も計り知れない。戦争の無残さを改めて考えさせられた。
自虐的歴史観を持つ必要はないが、しっかりと向き合い、目をそらさないことが大切である。


少々重い話になってしまった。



(3) 旅のお役立ちグッズ

 今回の旅では、

・中国のインターネット旅行社「C-trip」を利用して各種手配を行う。
・できるだけタクシーを使わず、路線バス等を利用する。
・DSDSのスマホを活用する。
・中国語の研修を深める。

などの、取り組みもあった。



・中国のインターネット旅行社「C-trip」を利用して各種手配を行う。

 まったくトラブルがなく、大変役立った。
新幹線切符の手配とホテルの手配に使った。日本の旅行社ではできない手配などが確実にできるところがいい。今後も利用したいと思う。

ただ、料金の支払い方法など、三つのホテルで、それぞれ異なる方法となっていた。利用する前は、多少の戸惑いがあった。


・できるだけタクシーを使わず、路線バス等を利用する。
・DSDSのスマホを活用する。

 内臓充電池が弱ったiPhoneに代わって、今年の2月に、中国製19,800円のスマホを新調した。
決め手は、DSDS(デュアルシムデュアルスタンバイ 現在日本製品には取り入れられていないが、これからの主流になるだろう)。

 DSDSとは、二つのSIMを入れて、同時に使うことができるものである。一つのSIMは、日本で使っている電話番号がそのまま使えるようにセットした。もう一つのSIMは、香港のデータ通信会社のものを入れて、データ通信に使うことにした。

 これにより、モバイルWi-Fiルータを持たなくても、海外でスマホだけで日本の電話と現地のデーター通信ができるようになった。
しかも、高速の回線を使って、1週間で1,500円程度の料金だった。

これは使える。百度地図を使うと、地図上に、バス路線番号やバス停がサクサクと表示される。

旅人には分かりにくい市内バスを活用できたのも、このスマホと百度地図のお陰である。


・中国語の研修を深める。

 中国語は難しい。特に発音が。現地での会話が一番の研修になる。どの言葉もそうだが、度胸を持って当たって砕けろ精神で、現地に入り込むことが、一番の研修である。



 ここでは語れないことも含めて、本当にいろいろなことがあった。しかし、とても楽しかった。思い出すたびに笑いがこみ上げるシーンも多い。
充実した時間を過ごすことができた。


 これからも、周りの協力に感謝しながら、異文化体験を深めていきたい。




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