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『声にだすことばえほん 外郎売(ういろううり)』
(長野ヒデ子・絵/齋藤孝・編 ほるぷ出版)





今回の作品は、享保三年(1718年)二代目市川團十郎が初演した歌舞伎十八番の演目です。早口言葉としてつとに有名で、アナウンサーや演劇関係者は誰もが一度は通らなければならない関門としても知られています。

この絵本は、NHKのEテレ「にほんごであそぼ」の監修者でもある齋藤孝明治大学教授が絵本用に文章を抜粋して構成したものですが、もとの演目のエッセンスを失うことなく、子供にも十分楽しんで朗読できるようになっている優れものです。

何と言っても面白いのは、立て板に水の如きの音の流れです。
確かにこれは「滑舌のよさ」を鍛えるには最適です。舌の回りもさることながら、息の切れがうまくできないと、この文章の朗読は大変難しいのです。

余談ですが、私は去年の11月から、毎日最低3回以上はこれを暗記で音読することを自分に課していますが、どれだけ練習しても、ふっと雑念が入ると途端につかえてしまいます。
「外郎売」は実に奥が深いです。
ボケ防止として、これからも続けていこうと思っています。

ちなみにここで言われている「ういろう」(または透頂香)とは、中国伝来の漢方薬のような丸薬のことで、今でも実際に神奈川県小田原市の株式会社ういろうで扱われています。

またまた余談ではありますが、俳句では「読初」(よみぞめ)と言う新年の季語があります。
今日では新年に入って初めて本を読むことを言っていますが、昔は行事としての性格が強かったのだそうです。『孝経(こうきょう)』などの漢書を音読して、新年の淑気をひきしめたのだとか。
来年の読初に、皆さんも『外郎売』に挑戦してみませんか?



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